「でも……これから何をしたらいいんだ?」
世界を救うと決めても、具体的に何をしたらいいのか分らない。
「《証》を集めなさい。残すはメルキアとグレノアの王家の者」
女のその言葉にゴクリと息を呑む。
……グレノア王家。
それなら一人しかいない。
グレノア国王……《ルーク・グレノア》
「ルークは敵だ。どうやって加護を得るつもりなんだ?」
ジルの問いかけに女はそっと視線を外した。
「加護は……生きていなくても得る事ができます。ただ《証》に触れるだけ」
……殺してもいい。
そういう意味に聞こえた。
その言葉に納得した様にジルは頷くと、ジルの瞳はまたあの深く淀んだ闇を纏う。
「その後、マナを探して下さい。マナを失った私に残された力はほんの僅か。マナの居場所さえ感じる事ができません」
マナが居なくなり、この人は力を失った。
……だから俺が代わりにマナを探してぶっ壊す。
「この子を連れて行って下さい」
女がそう言うと同時に、辺りが眩い光に包まれた。
その眩しい光に目を細めると、その中かに……何かの影が見える。
光が消えそっと目を開くと、そこには……一人の少女が立っていた。
長くふわふわの栗毛の髪に、少し緑がかった茶色の瞳。
細く白い手足に小柄な体。
そしてそこには……可愛らしい顔が付いている。
「この子は私の残された力で創り出した人形。多少の魔法が使えるので貴方の役に立つかもしれません」
「セリアです。よろしくね?」
そう言って彼女は天使の様な満面の笑みを浮かべた。
……まさに天使だ。
マジで……可愛い。
どうやらめちゃくちゃ俺のタイプの様だった。
まるで天使の様な彼女の登場で、さっきまでの重たい空気はどこかに吹き飛んで行ってしまっていた。
ドキドキと胸が鼓動を打ち、それは俺に恋の予感を告げていたり、いなかったり。
そんなくだならい事を考えていると、セリアは円らな瞳で俺を見つめ、ニッコリと笑みを見せる。
「……よ、よろしく……セリア?」
少し緊張しながら挨拶をする俺を見て、セリアはまた天使の様な笑顔になった。
でも、その笑った顔がほんの少しだけ……悲しそうに見えた気がした。