ぼくと世界とキミ


「俺はお前について来て欲しい。お前の勇者としての価値は、同盟に有利に働きそうだからな」

その青年の言葉にギュッと唇を噛み締める。

……そうかもしれない。

この世界で神の子の伝説を知らない奴なんて殆どいないし、その伝説を皆は健気に信仰している。

《勇者》の名前を出せば、大概の人は協力的かもしれない。

……まぁ、何の力も無い勇者だけど。

クスリと自嘲気味に笑って顔を上げる。

「……分かった。でも先に言っておくけど、俺……弱いからな。戦闘は期待しないでくれよ?」

そう言って沈んだ気持ちを悟られない様に、精一杯の笑顔を青年に向けた。

「お前が弱い事くらいもう知っている。せいぜい俺の後ろにコソコソと隠れているんだな」

青年はもうすっかり慣れたお得意の笑みを浮かべると、ポンと俺の肩を叩いた。

どうやら……彼なりに気を使ってくれたらしい。

「……うん」

小さく頷いて返すと、青年は少しだけ……優しく微笑んだ。

「さて、やるべき事も決まったわけだし……行くか」

青年はそう言うと、スタスタと出口に向かって行く。

「……えっ?もう出発!?」

ポカンと口を開けたまま、驚愕の瞳で青年を見つめる。

「次にグレノアが襲うのはこの国なんだぞ?今は一秒でも時間が惜しい」

青年は俺を振り返ると、少し眉を顰めて非難の視線を俺に送った。

「それは分かってるんだけど……体が……」

そう力無く呟くと同時に、なんとか忘れていた体の疲れを思い出す。

あの村を出てからもう何日も歩き続けてクタクタだ。

……正直、もう歩きたくない。