「パスが必要みたいだぞ。……持ってんの?」

「持ってはいないが……そこで待っていろ」

俺の問いに青年はそう答えると、余裕たっぷりに門番へと近付いて行く。

「……あっ!おいっ!」

慌てて呼び止めるが青年はそれを無視して、スタスタと門へと向かって歩いて行ってしまった。

青年の身なりはお世辞にも良くはなく、むしろ浮浪者の様に薄汚れた格好をしている。

そんな青年の姿に警戒する様に、門番はいかつい顔を更に強張らせて青年を睨んでいた。

……すでに不穏な空気を感じる。

……パスも無いのにどうするつもりなんだよ。

こんな緊迫している時期に下手な事をすれば、牢獄行きだけでは済まないかもしれない。

そんな心配をしていると青年は順番を待ってる人達の列にも並ばず、門番に近付くと短く何かを呟いた。

すると門番は驚いた様に大きく目を見開き、門の開閉を管理しているらしき男に合図を送り、その男はアワアワと慌てながら門を開くためのレバーを下げる。

「……へ?」

状況が理解出来ずに小さく声を漏らすと同時に、ゴゴゴと地面が擦れる音が聞こえる。

それと共に灰色の大きな門が左右に開かれ、美しい街並みが目前に広がった。

その美しい景色を茫然と見つめていると、青年がこちらに向かって『早くしろ』とばかりに手招きをしている事に気が付く。

……門番と……知り合いだったのか?

そんな疑問を抱えつつも、手招きをする青年の元へ急いで駆け寄ると、開け放たれた門を抜け、美しい城下町へと二人で入って行った。