「少し……話をしよう」
その言葉と共に、漆黒の瞳が冷たく俺を見下ろした。
「運命とは何だろうな」
その問いには答えないまま、ただ漆黒の男を見上げ続ける。
「決められた未来。変えられぬ道。お前は運命の通りに今、この場所にいる」
「何が……言いたいんだ?」
痛む体を擦りながら首を傾げて見せるが、ルークは意味の理解できないこちらの様子などお構い無しに話し続ける。
「でも、今ここで……お前を殺したら運命は変わるのだろうか」
ルークのその言葉と同時に、激しい雷鳴が辺りに轟く。
「あの哀れな女神の未来も変わるのかもしれないな」
……女神?
ルークの口から放たれたその単語に、思わず目を見開いた。
「セリアを知っているのか!?」
その俺の叫ぶ様な問いにルークは悲しそうに笑う。
「一度だけ会った事がある。遠い昔に出会った……哀れで、愚かな女だ」
ルークはクスリと自嘲気味に笑いながら愛おしそうに彼女を語ると、静かに俺を見つめた。
「お前は……あの女を殺せるのか?」
ルークのその問い掛けに、胸を射られたかのような衝撃を覚える。
もうじき訪れる……悪夢の様な時。
「……俺は」
何か答えなくてはと口を開いたにもかかわらず、言葉がうまく出てこない。
……やるって決めたじゃないか!!
……今さら何迷ってるんだよ!!
……約束したじゃないか!!
……俺がセリアの世界を救うって!!
心の中で弱い自分を奮い立たせるように懸命に叫ぶ。
しかし……それが俺の口から発せられる事は無かった。



