「ロイ……ここで休もう」

そう言ってジルが急に俺の肩を掴んだ。

「……え?」

驚いた様に二人を振り返ると、アシュリーがそっと俺に白いハンカチを渡してくる。

その白いハンカチと、二人の顔が……揺らいで見える。

震える指でそっと自分の頬に触れる。

その時初めて……自分が泣いていた事に気付いた。

それに気付いてしまったその瞬間、溢れる様に涙が流れ出し、胸が引き裂かれる様に痛んだ。

「……あれ?変だな……止まんない」

二人を心配させない様に、精一杯の笑顔を作ろうとしたが……失敗した。

二人が悲しそうな顔をして俺を見つめている。

その顔を見ているうちに言い表せない感情が俺を覆って行く。

涙が止まる事はなく、次第に嗚咽を漏らしながら子供の様に泣いていた。

「……おれ……俺……できない」

涙を流しながら縋る様にジルの腕を掴む。

「……俺は……セリアを……殺せ……ない」

肩を震わせて涙を流す俺の姿に、二人は辛そうに表情を曇らせたまま頷き続ける。

「……どうして……どうして」

何度も同じ言葉を呟き……泣き続けた。

涙が枯れる事はなく、いつまでも湧き出て流れ続ける。

暗い森の中に悲痛な叫びの様な俺の泣き声だけが響き渡った。

ただ風だけが俺を優しく包み込む様に吹いている。

その優しい風に抱かれながら……いつの間にか意識を失った。