「父様は何も感じないのですか!?あの魔物達は何もしていないじゃないか!!」
声を振り絞りそう叫ぶと、僕の頬を涙が伝っていった。
それを父は悲しそうな瞳で見つめると、もう一度小さく首を横に振って見せる。
「魔物は人間の敵だ。獰猛で、残酷で、人の血肉を喰いあさる怖ろしい生き物だ。お前は騙されているのだよ」
「……残酷?」
父の言葉を反芻し自嘲気味に笑って見せると、父は表情を曇らせ少し鋭い瞳で僕を見つめた。
「僕は騙されてなんかいない。あの村のみんなは優しくしてくれた。父様達なんかより、ずっと僕の事を分かってくれた!!残酷で怖ろしいのは父様達の方じゃないか!!」
「口を慎め!!」
父の怒声が薄暗い牢屋に響き、そして辺りに凍り付く様な静寂が戻った。
涙を流し憎悪の籠った瞳で父を睨みつけると、父はそっと視線を外し僕に背を向ける。
「……もう……終わった事だ」
父はそう小さく呟くと、僕から逃げる様に早足で牢から離れて行った。



