そっと割れた窓に向かって歩いて行く。

窓の外は丁度城の裏側にあたり、小さな庭の様になっている。

その小さな庭に……二本の十字架が立っているのが見えた。

十字架の前にはいつ置かれたのかも分からない、干乾びた花束が添えられている。

「……ルーク」

彼が埋めてくれたのかもしれない。

何故そう思うのかは、自分でもよく分からなかった。

《私はやらなくてはならない。大切な友との……約束を守るために》

あの日のルークの言葉を思い出す。

《もしもお前が生き残れば、そこに待っているのは……残酷な終わりだけだ》

その彼の言葉が頭の中に響き、それは俺の心を酷くざわめかせる。

……ルーク・グレノア。

それはグレノア国の王であり、人間を滅ぼそうとする悪しき者でもあり、そして俺の大切なモノを奪った殺戮者でもある。

そんな彼を憎いと思うと同時に、何故か言い表せない様な不思議な感覚がした。

ルークが去り際に見せた……傷付いた横顔。

そんな遠い昔の彼の姿を思い出したその瞬間、急に強い風が吹き、干乾びた花弁が悲しげに空に舞った。

それはまるで俺のフラフラと揺れる心を現すかの様に、ヒラヒラと切なく宙を舞った。

「俺は……ルークを殺すのか」

自分自身に問い掛ける様にそう小さく呟くと、ギュッと強く胸を押さえる。

世界を……救うために。