「世界は今、崩壊へと向かっている!」

その俺の言葉と共に空は見る見るうちに黒い雲で覆われてゆき、ポツポツと雨が降り出した。

「今は争い合っている時ではない!この黒き空を見よ!!あの大地の傷を見よ!!」

そう叫ぶと兵士達は皆少し不安そうに瞳を揺らし、不穏な暗黒の空を仰ぐ。

そんな中、雨は次第に強くなり、空に雷鳴が轟き始める。

「お前達は知っているのか!!ルークの望む世界とはなんなのか!!それは人の居ない……魔物が全てを統べる世界だ!!」

その俺の言葉に辺りが一際大きくざわついた。

思う所があるのか、兵士達は互いに顔を見合せながら互いの見解を囁き合っている。

……正直、グレノアの兵士達の待遇は悲惨なモノらしい。

まるでゴミクズの様に使われる兵士達の中には不満不平を訴える奴らもかなりいるそうだった。

「それがお前達の望む世界なのか!!お前達が命を賭けて守り通したいものなのか!!」

吹き荒ぶ激しい雨の中、俺の声が世界に響き渡る。

「本当に守りたいモノとは何だ!!命を賭けたその先に待っているモノが何なのか、お前達は本当に考えた事があるのか!!」

その俺の叫びに兵士達のざわめきが止んだ。

兵士達は困惑した様に瞳を震わせたまま、ただ真っ直ぐに俺を見上げている。

「戦えば戦うほど世界は崩壊へと向かっていく。誰かの流した血が、涙が、悲鳴が……加速度的に世界を崩壊へと向かわせる!!」

そう力一杯叫ぶと、静かに目の前の兵士たちを見回した。