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誰も居ない一人きりの薄暗い部屋を、悲鳴の様に轟く雷が時折照らし出す。

その雷鳴と共に強く目を閉じると、頭の中に声が響いて来る。

(……愚かな人間)

……やめて。

(……醜い人間)

……やめて!

(……こんな……)

全てを拒絶する様に両耳を手で塞ぐが、それでも声が消える事は無かった。

(……愚かな世界に何の意味があるのだ)

……やめて!!

(……滅せよ)

……いや!

(……我と共に)

……いやよ!!

(……我が半身……)

その声はそう言うと哀れな私を嘲笑い……聞こえなくなった。

空には未だ激しい雷が光り、叩きつける様な雨が降り続ける。

「……ロイ」

そっと愛しい《彼》の名を呼ぶ。

……もう時間が無い。

(……滅せよ)

その言葉だけが、いつまでも私の頭の中を廻った。

……終わりの時が近付きつつある。

……悲しい……最後の時が。

「……早く……私を殺して……ロイ」

そう小さく呟くと、私の頬を溢れる様に涙が流れて行った。