私は……知っている。

ノヴァが私に死んだ《母親》を重ねている事を。

私に必要とされたくて、私に褒められたくて、私に愛されたくて、そして今度こそ……大切な《母》の願いを守れるように。

ただそれだけの為に……ノヴァは躊躇う事無く、その手を血に染め続ける。

でも私はそんなノヴァの心を利用して、この子を戦わせ続けている。

この子を……そして《彼》をこんな風に変えてしまったのは……私。

本当はとても優しい二人。

その手を血に染めさせたのは……私。

でも、今更後悔したところで……もう遅い。

「全てが……遅過ぎる」

そう小さく呟いて、右耳のピアスに指を触れる。

それは私の愛しい《彼》が遺した唯一のモノ。

その《赤》が心の奥底に沈めた黒く淀んだ感情を呼び起こさせる。

そっとノヴァを抱き締めると小さな体から血が滲み出し、私の服を赤く染めた。

その悲しい温もりを感じたまま、強く、強くノヴァを抱き締める。

私は……人間を許せない。

そしてこのまま朽ち果てる気も無い。

どんな罪に濡れ、どんな悪に染まろうとも……私は決して退きはしない。

それが私の……《愛の証》

二度と会う事の出来ない愛しい《彼》への……《誓い》

「……ごめんね。ごめんね……ノヴァ」

そう声を震わせ愚かで愛しい《人間》を抱いたまま、振り続ける雨と共に……私の頬を涙が伝った。