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一人きりの孤独な部屋の中……女が泣いている。
女は直接酒瓶から浴びる様に酒を飲むと、テーブルに置きっぱなしの白い封筒に目を留めた。
震える手を伸ばしそれを手にすると、クローバーのシールをそっと剥がす。
その中から出て来た二つ折りのメッセージカードを開くと……そこには読むのも難しいたどたどしい文字が書かれていた。
《おたんじょうび おめでとう》
……たったそれだけのメッセージ。
しかし女はその頼りない文字から目を離せないまま、ボロボロと溢れる様に涙を流した。
「……ごめんなさい……ごめんなさい」
優しい息子からのメッセージと、床に転がったままだった赤い靴を抱き締め、一人きりの部屋の中で呟く様に繰り返し謝り続ける。
……私はなぜ……こんなにも弱いのだろうか。
どうしてあの子を傷付ける事しかできないのだろうか。
女の頬を止めどなく涙は流れ続ける。
「……私は……どうすればいいの」
そう声を震わせ女は呟くと、窓からそっと空を仰いだ。
漆黒の闇の中には美しい満月が妖しく揺れ、それはまるで女の全ての罪を許すかの様に優しく光る。
そしてその光の中に……愛しい男の姿が見える。
それは酒に溺れた女が見た夢なのか、女の弱い心が生み出した幻なのかは分からない。
しかしその愛しい影は女に向かってそっと手を伸ばすと……優しく笑った。
女は満月を掴む様に手を伸ばすと、カードと靴を抱えたままフラフラと窓に向かって歩いて行く。
そして震える手で窓を押し開けると、静かに目を閉じる。
「……ごめんね……ノヴァ」
女はそれだけ呟くと、満月の輝く美しい空へと向かって窓から高く……飛んだ。



