ぼくと世界とキミ


   *

一人きりの孤独な部屋の中……女が泣いている。

女は直接酒瓶から浴びる様に酒を飲むと、テーブルに置きっぱなしの白い封筒に目を留めた。

震える手を伸ばしそれを手にすると、クローバーのシールをそっと剥がす。

その中から出て来た二つ折りのメッセージカードを開くと……そこには読むのも難しいたどたどしい文字が書かれていた。


《おたんじょうび おめでとう》


……たったそれだけのメッセージ。

しかし女はその頼りない文字から目を離せないまま、ボロボロと溢れる様に涙を流した。

「……ごめんなさい……ごめんなさい」

優しい息子からのメッセージと、床に転がったままだった赤い靴を抱き締め、一人きりの部屋の中で呟く様に繰り返し謝り続ける。

……私はなぜ……こんなにも弱いのだろうか。

どうしてあの子を傷付ける事しかできないのだろうか。

女の頬を止めどなく涙は流れ続ける。

「……私は……どうすればいいの」

そう声を震わせ女は呟くと、窓からそっと空を仰いだ。

漆黒の闇の中には美しい満月が妖しく揺れ、それはまるで女の全ての罪を許すかの様に優しく光る。

そしてその光の中に……愛しい男の姿が見える。

それは酒に溺れた女が見た夢なのか、女の弱い心が生み出した幻なのかは分からない。

しかしその愛しい影は女に向かってそっと手を伸ばすと……優しく笑った。

女は満月を掴む様に手を伸ばすと、カードと靴を抱えたままフラフラと窓に向かって歩いて行く。

そして震える手で窓を押し開けると、静かに目を閉じる。

「……ごめんね……ノヴァ」

女はそれだけ呟くと、満月の輝く美しい空へと向かって窓から高く……飛んだ。