皿を洗い続けているといつの間にか日も落ち、今日の仕事が終わった。
皆は手早く帰る支度を済ませると、椅子に座る男の前に一列に並ぶ。
椅子に座った男が一人一人に今日の給料を手渡していき、そして最後に僕の番になった。
「今日の給料だ」
そう言って男が差し出した手の下に、そっと手の平を広げる。
するとチャリンチャリンと数枚の小銭が僕の手の平の上で音を立てた。
いつもの……只でさえ少ない給料の半分しかない。
「遅刻してきたからな」
そう言ってニヤリと不快な笑みを浮かべた男の手には、本来僕が貰える筈だった給料の残りが握られていた。
男は手にしたお金をこれ見よがしに自分の胸ポケットにしまって見せる。
……五分だけなのに。
心の中でそう思ったがクビになっては困るので、そのまま小さく頭を下げると厨房を後にした。
日の沈む赤い町を走りながら真っ直ぐに靴屋へ向かう。
扉を開くといつもの様に鈴が鳴り、奥から店主のおじいさんが出てくる。
「ついに明日だな?」
「うん!!」
店主のおじいさんの言葉にニッコリと笑みを返すと、おじいさんは嬉しそうに笑って僕の頭をワシャワシャと撫で回した。
そしておじいさんは僕の額についた傷を見て、微かに目を見開く。
そのおじいさんの視線から隠す様に、手で額を覆って笑って見せると……おじいさんは表情を曇らせて目を伏せた。
「どうしてお前みたいな子ばかりが……苦しまなくてはならないんだろうな」
おじいさんはそう小さく呟くと少しだけ瞳を悲しそうに揺らして僕を見つめる。
不思議そうに首を傾げて見せると、おじいさんはいつもの優しい笑顔に戻った。



