「この……糞ガキが!!」
男は椅子から立ち上がると重そうな体を揺すって僕に走り寄ると、思いっきり手を振り上げた。
そしてその手は僕の頬に向かって振り下ろされ、平手打ちを喰らった僕は吹き飛びドカッと壁に背を打ち付けた。
「すみません!!」
痛む体を無視して慌てて床に擦りつける様に頭を下げると、男はその僕の頭の上にドンと足を置いて踏みつける。
「誰がお前みたいなガキを使ってやってると思ってんだ!!遅刻なんかしやがって……なんならクビにしたっていいんだぜ!?」
そう言って男はグリグリと頭を踏みけ、コンクリートの床に額が擦れ血が滲んだ。
「ご、ごめんなさい!!それだけは許して下さい!!」
男の罵声と暴力の続く中、必死にその言葉だけを繰り返した。
……ここをクビになったら生きていけない。
……あの靴だって。
遠くなる意識と次第に麻痺していく心の中で、何度も何度も繰り返し必死に謝り続けた。
それから数十分ほど謝り続け、男の気も晴れたのかやっと解放される。
ドスンと男が椅子に座るのを見ると、痛む体を起こしすぐに皿洗いの仕事を始める。
次々に運ばれてくる汚れた皿を冷たい水に浸け、洗剤の付いたスポンジでそれを洗って行く。
冷たい水の中に何時間も手を浸けたまま皿を洗い続けていると、手があかぎれて、ひび割れた所から洗剤が沁みる。
でも手を休める事はできない。
少しでも遅れようものなら、強烈な張り手が飛んでくる。
何も考えずただ夢中で皿を洗った。



