……それから数か月。
クーはすくすくと大きく成長した。
立ち上がると俺と変わらない位……デカイ。
しかし性格は穏やかで人懐っこい。
いつまでも泉に置いておくのは可哀想だと言う彼女の提案で、村に連れて帰りライラの家で飼う事になった。
当たり前の事だが、村の人達は初め物凄く反対した。
しかし持ち前の人懐っこさと、愛らしさに……今では村の人気者となっている。
クーがライラの家で飼われる様になってから、俺も村へ遊びに行く事が多くなり、村の住人とも話す機会が増えた。
クーは今日もトレードマークの真っ赤なリボンを翻し、村の見回りに余念がない。
見回りの途中、色々な人に愛想を振り撒きながら餌をねだる。
……なぜかベジタリアンに育った。
部屋の窓から美味しそうにキャベツを食べる姿が見える。
真黒なフサフサの尻尾を嬉しそうにブンブンと振りながら、キャベツを食べる姿に自然に笑みが零れた。
「最近、よく笑う様になったね」
そう言ってライラが嬉しそうに笑った。
「……そうか?」
そう素っ気なく答え、照れたように顔を背けると、また彼女の笑い声が聞こえる。
最近城の者達にも、表情が優しくなったと言われた事を思い出す。
これもきっと彼女と……クーのお陰だろう。
心の中で愛しい彼女と、優しい魔物に……深く感謝した。
今日も何も起こらない、平凡で穏やかな一日が過ぎて行く。
そうこの時、俺は……ずっとこんな日が続くと思っていた。
……あの悪夢の様な夜までは。



