ぼくと世界とキミ


「……クーって名前にしたのか」

その俺の問いかけに彼女が小さく頷いて返すと、それから暫く沈黙が続いた。

お互い何も話し出せない。

互いを窺う様にチラチラと目を合わせては逸らしてを繰り返し、時間だけが静かに過ぎて行った。

ふと彼女の顔を見たその瞬間、ビクッと身を竦め驚いた様に一歩後ずさる。

俯いた彼女の瞳から……ポロポロと涙が零れていた。

……困った。

泣かれてしまってはどうしようもない。

「……泣くな。俺はお前のためにと思って……」

「分かってるよ!!」

そう声を荒げた彼女の瞳から、ポロポロと涙は零れ続ける。

どうする事もできずに立ち尽くしていると、泣いている彼女の頬を……クーが小さな舌で舐めた。

まるで泣いている彼女を慰めるかの様に、ク―はペロペロと懸命に彼女の涙を拭い続ける。

「……クー」

そんな健気なク―の姿に、益々彼女の涙は止まらない。

仕舞いにはワンワンと大声で泣き出してしまった。

「だってクーいい子なんだもん!優しいんだもん!!魔物が皆悪い奴だなんて決めつけちゃうのは絶対に嫌なんだもん!!」

そう言ってライラは大声で泣きながら地面に座り込んでしまう。

「……分かった。分かったから……泣くな」

子供みたく泣きじゃくる彼女に……ついにこっちが折れてしまった。

「いいから。一緒に居てもいいから。……頼むから泣かないでくれ」

そう言って地面に膝をつき彼女の肩にそっと手を触れると、ライラは涙の溜まった瞳で真っ直ぐに俺を見つめた。

「……クーと居てもいいの?」

泣き腫らした瞳でこちらを見つめる彼女に、コクンと小さく頷いて返す。

すると彼女はさっきまであんなに泣いていたのが嘘の様に……たちまち眩しい笑顔になった。

「ク―!!一緒に居られるよ!!」

「ク~?」

嬉しそうに笑う彼女の腕の中で丸くなるクーを見て……一際大きな溜息が漏れ、疲れた様に肩を落とす。


……この日初めて、自分が女の涙に弱い事を知った。