泉に着き辺りを見回すが……彼女の姿は無い。
……今日はいないのだろうか。
それとも……もうここには来ないつもりなのかもしれない。
……もう彼女に会えない。
そんな事を考えるだけで胸が張り裂けそうな程に激しく痛んだ。
「ク~?」
急に聞こえた気の抜けた声に、そっと足元を見ると……そこには《黒い塊》が落ちている。
犬の様な体に、黒いモコモコの毛。
ピンと伸びた耳とフサフサの尻尾。
その首には赤いリボンが巻かれ、それと同じ赤いクリッとした愛らしい瞳が……真っ直ぐに俺を見つめていた。
「……クー!!」
急に何かを呼ぶ声が聞こえ振り返ると、森の奥からライラが走って来るのが見えた。
気まずい彼女との再会にどうしていいのか分からず、ただ茫然と彼女を見つめたままその場に立ち尽くす。
「……ジル!?」
近くまで走ってきた彼女が俺に気付き、驚いた顔をして俺を見つめた。
そしてライラは微かに唇を震わせると、悲しそうに笑う。
「もう……来てくれないと思った」
ライラはそう小さく呟き……魔物をそっと抱き上げた。



