「待て」

そう言ってジルが突然兵士を呼び止めた。

「……いい加減にしてくれ!!」

兵士が少しイライラした様に声を荒げると、ジルはセリアに向かって目配せをする。

するとセリアはジルの考えを理解したのかコクリと頷いて返し、それから大きく息を吸った。

「こちらに居られる方を何方と心得る!!セレリア国第一皇子であり……そして伝説の勇者様……ロイ・セレリア様ですぞ!!」

セリアのやけに演技くさい大声が辺りに響き渡ると、辺りで俺達のやり取りを聞いていた人達がざわざわとざわめく。

「……勇者……様?」

兵士が驚いた様に目を丸くし、真っ直ぐに俺を見つめている。

すると周りの兵士達もザワザワと騒ぎ始めた。

「お前達は勇者様が国王陛下にお会いするのを邪魔すると言うのか?何の確認もせずに勇者様を追い返したなどと、後から王の耳に入ってみろ?極刑かもしれないな?その覚悟はあるのか?」

豪く芝居がかったジルの脅しに、兵士が冷汗を浮かべて一歩後ずさる。

「し、暫くお待ち頂けますか?今、確認を……」

「その必要は無い」

慌てる兵士の言葉を遮り、どこかから男の声が聞こえた。