広く様々な店の並ぶ大通りを進んで行くと、ついに目の前に大きな門が姿を現した。

城門の前には兵士が数人立っていて、一般人はもちろん中に入る事は許されない。

田舎からの観光客なのか、周りの人達は遠巻きに城を見上げている。

そんな彼等の人混みを抜け門に近付いて行くと、兵士達が警戒した様に俺達に鋭い視線を向けた。

「この城に何の用だ」

そう言って兵士は少し警戒しながら、ゆっくりと俺達に近付いてくる。

「あ、あの俺達……」

「私はフリーディア国第一皇子……ジル・フリーディアだ。国王陛下にお会いしたい」

俺の言葉を遮ってジルが簡潔に身分を明かすと、兵士は驚いた様に目を見開いた。

しかしすぐに表情を強張らせ、そして腰に差している剣の柄にそっと手を掛ける。

「簡単には信じられないな。皇子の名を語る……偽物かもしれない」

そう言って兵士は疑う様にジルに鋭い視線を向けた。

するとジルは初めからそう言われるのが分っていたのか、特に何も言い返そうとしないままフゥと息を吐く。

「我々は国王陛下を危険に晒す様な事はできない。……帰ってくれ」

兵士はそう言うと、そのまま自分の持ち場へと戻って行こうとする。