「……ロイ」

セリアが少し不安そうな顔をして、俺の名を呼ぶ。

……一体……何だったんだ。

「……もしかして……幽霊?」

自分で出したその答えと共に、背筋に冷たい汗が流れる。

その次の瞬間、キンッと金属の弾かれる音が聞こえ、ビクッと身を竦めた。

「……ロイ……それ……」

セリアが声を震わせ、青白い顔をして地面を指差している。

そのセリアの指差す方へとゆっくりと視線下ろすとそこには……《鍵》が落ちていた。

……古めかしい形の《鍵》

しかもこれは……昨日宿屋で受け取った物と全く同じ物の様だった。

「……ど、どうする?ひ、拾っとく?」

引き攣った笑みを浮かべながら、二人に問い掛ける。
 
……内心触りたくない。

なんせ、昨日の化けも……おばあさんの物だ。

何が起こるか分らない。

もしかして……呪われたりして。

怯える様に瞳を揺らし鍵を見つめる。

しかしそんな俺の様子を無視して、二人は早く拾えとばかりに目で訴えた。

……なぜ……俺が。

そんな事が頭を過ったが、それを無視してグッと拳を握り締める。

「……だぁ!!」

そして小さく叫ぶと同時に、勢いよく鍵を拾い上げた。

……来るなら来い!!

………。

……。

…。

それから暫く待って見るが……何も起こらない。

よく見ると古びた鍵に、メルキア国の紋章が入っている事に気が付いた。

「……なんか……重要な物なのかな?」

少し冷静さを取り戻し、ジルに鍵を渡しながら問いかける。

「……分らない。だが、害は無い様だな。……とりあえず駅に向かおう。考えるのはそれからでもいい」

ジルが鍵を保管する事になり、不可解な出来事が何も解明されないまま……重い足取りでスカイトレインの駅へと向かった。