ぼくと世界とキミ


「……お客様は《メルキア》は初めてですか?」

急におばあさんが問い掛けてくる。

「初めてだが?」

ジルが食事をしながら素っ気なく答えると、おばあさんは一人でうんうんと頷いて見せた。

「……では……メルキアの《女神》の話は聞きましたか?」

そのおばあさんの言葉に顔を上げ、それからハッと船での出来事を思い出す。

「ついさっき見てきたけど……よく分らないんだ」

温かなシチューを食べながらそう答えると、おばあさんはもう一度深く頷いて見せた。

……とりあえずここのメシは美味い。

「女神とは名ばかりの……ただの生贄ですよ」

「……え?」

おばあさんの突然の呟きに、全員が料理から顔を上げおばあさんを見つめた。

しかしおばあさんがそれ以上話す事はなく、俺達が空けた皿を次々に片付け始める。

そしてそれから誰も話し出さないまま食事が終わると、おばあさんは最後にテーブルを綺麗に拭き……そのまま部屋から出て行ってしまった。