甲板に出る扉を開けると同時に、心地よい風を感じた。
少し冷たく感じるその風は、まるで気分の悪さも吹き飛ばしてくれる様な不思議な感覚がする。
甲板に出て辺りを見回すと、そこでは他の乗客が数人、置いてある椅子に横たわって寝ていたり、テーブルで食事をしている姿が見えた。
そんな彼等を横目にフラフラと進み、空いていた椅子に座ると、夕日がゆっくりと沈んでいくのを三人で無言のまま眺める。
……それからどれほど時間が経っただろうか。
夕日が沈み辺りが薄暗くなると、甲板の明かりが灯される。
「……少し……楽になったかも」
セリアは少し体調が良くなったのか、そう言って今日初めての笑顔を見せた。
……確かに楽になった気がする。
今ではあんなに痛かった腹の痛みも、船酔いの気分の悪さもほとんど感じない。
ジルにしてもいくらか気分が良くなったのか、少し表情に余裕が見える。
「どれぐらいで向こうに着くんだ?」
その俺の問いにジルは首を傾げ、小さく口を開く。
「二、三時間と聞いたが……」
そこまで言ってジルは口を噤むと、表情を曇らせ俯いた。
「……どうしたの?」
急に黙ってしまったジルを、セリアが心配そうに見つめる。
「暗くなると魔物が活動的になる。船の上で襲われたらどうしようもないな……と、思っただけだ」
ジルのその言葉と共に、辺りにシンとした静寂が広がった。
コイツは……実に不安になる事を口にしやがる。
仮に魔物は倒せたとしても、船が沈みでもしたら間違いなく……死ぬ。
俺は自慢じゃないが、生まれてから一度たりとも泳いだ事などない。
魔物に何て襲われたら、そのまま船と一緒に沈んで……海の……いや、湖の藻クズだ。
「……だ、大丈夫だって!!あと一時間位だし……あっと言う間に着いちゃうって!!」
そう言ってセリアは引き攣った笑みを浮かべると、バシバシとジルの肩を叩いた。
……その時だった。



