城の城門を抜け、城下町に入ると……そこもやはり、城の中と同じ様な無残な死体で埋め尽くされていた。

その上を白い馬は物凄いスピードで駆け抜けていく。

あっと言う間に町を駆け抜け最後の門を飛び出すと、白い馬は広い草原をひた走る。

嵐に包まれた闇の中、遥か彼方の地平線が淡いブルーへと変わっていく。

何も出来ないまま馬の背に揺られ茫然と美しい《世界》を見つめたまま、音も無く俺の頬を涙が伝い落ちる。

馬は休む事すらせずに走り続け、辺りが徐々に明るくなっていく。

……いつの間にか嵐は止んでいた。

霧のかかる朝焼けの中を、白く美しい馬は懸命に走り続ける。

白い鬣(たてがみ)を風に揺らし微かに息を荒くしながらも、その円らな瞳は真っ直ぐに世界の果てを見つめていた。

……俺は……何も出来ない。

グッと唇を噛み締め目を閉じると、溢れる様に涙が流れて行く。

自分の弱さと失った沢山のモノが止めどなく脳裏に溢れ、美しい背に揺られたまま……眠る様に意識を失った。