……外は……嵐だったのか。

粉々に砕かれた大きな窓から激しい風と雨が吹き込み、血で赤く染まったカーテンをバタバタと揺らしていた。

ゆっくりと部屋の奥へと進んで行くと、突然激しい雷鳴が響き、仄暗い部屋が一瞬明るく照らされる。

その一瞬の光に、思い描いていた通りの……いや……そうあってほしくないと願った光景が照らし出された。

……強く偉大だった父。

……気高く聡明だった母。

二人は夥しい血を流し、雨と風の吹き付ける冷たい床の上に横たわったまま……ピクリとも動かない。

「……お前が……勇者か?」

低く……どこか心に響く不思議な声が後ろから聞こえ、ゆっくりと振り向くと、時折光る雷光に照らし出される……一人の男の姿が見えた。

深い闇の様に黒い髪と瞳に、何の感情も読み取れない無表情な顔。

鎧を纏った逞しい体に……手にしたままの大きな黒い剣。

それは絶対的な力を持つ存在。

残虐な殺戮者を統べる者。

無慈悲な侵略者。