大好きな幼馴染は既婚者子持ち

 美亜のところにゆっくり戻る。

「なんやったん?」
「実は、クッキーとライブのチケット渡された」
「えー告白?」
「いや、体育祭の時から気になってるとは言われたけど、友達になってほしいって」
「めっちゃええやん。きゅんきゅんやな。青春や」

 ライブのチケットを教室で見る。ちょうどホワイトデーだった。わたしは放課後に文香にケータイでメールを送る。

《まじか! すご! わたしもOKもらったよ。悠莉も付き合ってダブデしよー⭐︎》
《気早いよ。どんなひとかもわからんし》

 門から出ようとひとり歩いていると、蒼くんと男性ふたりの姿が見えた。そして蒼くんだけが、わたしに近づいてくる。

「ごめんなさい、待ち伏せしてた」

 申し訳なさそうにする蒼くんが可愛く見えて、わたしは笑ってしまった。

「大丈夫ですよ」
「よかった」

 蒼くんは自転車を押しながら、駅まで一緒に歩いてくれた。着いてからも音楽の話やクッキーを作ったエピソード、それから中学のことなどを話していると、あっという間に1時間たっていた。

「メルアド教えてくれへん?」

 わたしたちはアドレスを交換した。わたしはひとり改札をくぐる。振り返ると蒼くんがいて、手を振ってくれたので振り返す。不思議だ、すごくくすぐったい気持ち。今日話したばかりなのに、蒼くんなら安心できた。

 電車に乗ってケータイを見ると、蒼くんからメールが届いていた。

《これからよろしく。蒼》

 わたしはケータイを閉じた。蒼くんはただの先輩、それに友達。やましい気持ちはわたしにはない。だけど、だけど。10年以上片思いして叶わなくて、突然いなくなった類斗を忘れられるチャンスが到来したのかもしれない。いやいや、そんなの蒼くんに失礼だ。ありえない。

《明日も一緒に帰れる?》
《いいですよ》
《敬語やめよー》
《わかった》

 短文でやり取りを重ねる。そういえば、類斗とはメールしたことない。お互いケータイ持ってなかったしなあ。どんなメールするんだろう。

 それからはずっと蒼くんとメールをした。寝る前に短い電話もした。起きると蒼くんからメールが来ているのが当たり前になっていった。放課後や休みの日は遊ぶようになっていった。それと同時に奏也や文香から遠かった。自然とわたしたちは会わなくなっていった。

 蒼くんはいつも真っ直ぐだった。「かわいい」ってずっと言ってくれる。1つ上なだけで頼りになった、一緒にいて話をするだけで楽しかった。ドキドキする気持ちではなかったけど。それでも、わたしは蒼くんと会うのが楽しみになっていった。

 部屋でひとりでいる時や、授業中。蒼くんとの会話を思い出して笑ってしまうこともあった。ライブ楽しみだなーって思いながら、だれと行こうかなと思った。文香を誘うか美亜にするか。

 ライブはホワイトデー。土曜日の午後三時からだった。文香はもしかしたらデートかもしれない。美亜に声をかけてみるか……と思った。