大好きな幼馴染は既婚者子持ち

 明日はバレンタインデーだった。わたしと文香は毎年、類斗や奏也に手作りのお菓子をあげていた。料理の上手な文香がほとんど作っていたけど。わたしはラッピング担当。

 友達にあげるために文香とチョコを作る。明日、文香は告白するらしい。想いを寄せる先輩に。わたしはそんな人いないけど、とりあえず作った。奏也にはあげよう。ふたりで近所の神社に行き、お願いをした。文香は先輩との成功を。わたしは?

 まあ、彼氏でもできればいいなーっててきとうにお願いした。神社を後にして、それから別れた。

 バレンタイン当日は、みんな紙袋をさげて、学校に来ていた。普段お菓子禁止の学校だが今日だけは先生も大目に見ている様子だった。

 わたしは学校の門を抜け、靴箱に行く。すると、見慣れない紙が入っていた。なに? と思って開けると、昼休憩時に学校裏のベンチに来てほしいという内容が書かれていた。字は綺麗だが女子が書いたようではない雰囲気。最後に『2年5組 今藤』と書かれていた。

 なにこれ? 恨みでもかった? と思いながらも紙を手に持ち、教室に行く。椅子に座って紙を眺める。隣の席の美亜が来る。

「なにそれー? 手紙?」
「ああ、うん。靴箱に入ってて」
「もしかして告白?」
「違うと思うけど。2年5組の今藤ってひと」
「だれやろ? わからへんなあ。一緒に行ってあげるで」
「ほんまに? 助かる」

 わたしは手紙の主が気になって、勉強に力が入らなかった。昼休憩が待ち遠しいような、怖いような。落とし物を拾ってくれているとか? それか別の用事?

 わたしは昼休憩に友達にお菓子を配ったり、もらったりしたのち美亜とトイレに行き、それから校舎裏のベンチに向かった。そこには、制服姿の男性が座っていた。周りには誰もいない。

「ほら、行ってきい。わたし、ここで見とくから」
「う、うん。ありがとう」

 わたしは心臓が口から出そうになりながら、ひとりで前に進む。手紙の主だろうか、近づくと顔をあげた。

「すみません、突然」
「いえ、なんでしょうか……」

 丸い黒縁眼鏡をかけた、優しそうな印象の人だった。優しそうで安心する。すると男性は立ち上がる。

「友達になってもらえませんか? 正直に言うと、体育祭で見たときから気になってて」
「え? わたしを?」
「はい。突然ごめんなさい。とりあえず、友達になってもらいたくて」
「友達なら……はい」
「やったあ!」

 ガッツポーズをする男性。

「僕、今藤 蒼《あおい》って言います。ゆりちゃんって呼んでもいいですか」
「あ、はい」
「これ」

 と、差し出されたのは、小さな袋だった。中を開けると、可愛らしいクマのクッキーが入っていた。

「姉と一緒に作ったんです。だから美味しいと思うから、食べてもらえませんか」
「ありがとうございます」
「自分、音楽やってて。ここの軽音には入ってないんですけど、今度ライブがあるから見に来てもらえませんか。これチケットです」

 袋の中にチケットが2枚入ってた。

「もしよかったら友達と来てください。それから、また会ったら声かけてもいいですか」
「はい」
「よかったー」

 蒼くんはくしゃって笑った。類斗みたいに。ああ、これが類斗だったらなって少しだけ思ったけど、すぐにその気持ちを消せるように練習済み。