恋愛百景


第5話「邂逅の答え」

星矢と再会してからの時間は、穏やかに、けれど確実に何かを変えていった。

ただの“昔の知り合い”として始まった関係は、気づけばそれ以上の意味を持ち始めていた。

ある日、いつものように食事を終えて、帰り道を並んで歩いていたときだった。

「昭恵さ」

不意に名前を呼ばれ、足を止める。

「…俺たちさ、あのとき、ちゃんと終わらせてなかったよな」

静かな声だった。けれど、その言葉はまっすぐ胸に届いた。

昭恵は少しだけ視線を落とす。

「うん…自然に終わっちゃったよね」

「あのとき、忙しいのを言い訳にして、ちゃんと向き合わなかった」

星矢はそう言って、小さく息を吐いた。

「本当は、離れたくなかった」

その言葉に、胸の奥が強く揺れる。

ずっと心のどこかに残っていた想いが、ゆっくりとほどけていくのを感じた。

「私も…同じだったよ」

気づけば、言葉がこぼれていた。

「あのとき、寂しいって言えなかった。嫌われるのが怖くて」

星矢が驚いたように昭恵を見る。

でもその表情は、すぐに優しく崩れた。

「…やっぱり、似てるな」

少しだけ笑い合う。その空気が、昔と同じで、それ以上に温かかった。

沈黙が訪れる。けれどそれは、気まずさではなく、確かめ合うための静けさだった。

星矢が一歩、距離を詰める。

「昭恵」

まっすぐに名前を呼ばれる。

「もう一回、やり直さないか」

その言葉に、時間が止まったような気がした。

昔と同じはずなのに、今は全く違う意味を持っている。

あの頃は、ただ好きという気持ちだけだった。

でも今は、後悔も、すれ違いも、全部知った上で、それでも一緒にいたいと思っている。

昭恵はゆっくりと顔を上げた。

「…うん」

小さく頷く。

「今度は、ちゃんと向き合おう」

その言葉に、星矢は強く頷いた。

「絶対に、もう手放さない」

夕暮れの中、二人の距離がゆっくりと縮まる。

触れた手の温もりが、確かな現実として伝わってくる。

一度は途切れたはずの関係。

それでも、こうしてまた巡り合えたことに、きっと意味がある。

あの春の日に始まった物語は、遠回りをして、ようやくここに辿り着いた。

そして今――

星矢と昭恵の時間は、もう一度、静かに動き出す。