恋愛百景



第3話「いつもの助け」

「何してるの」

静かな声なのに、空気が一気に変わる。

振り向かなくても分かる。

「宏太……」

男子たちは一瞬顔を見合わせて、

「あー、ごめん」

軽く手を上げて、そのまま離れていった。

(さすがすぎるでしょ、この人)

一気に周りの音が遠くなる。

「大丈夫?」

宏太が少しだけ顔を覗き込む。

「うん……ありがと」

気づけば、少しだけ普通に話せていた。

「助かった、ほんと」

宏太は小さく頷く。

「ならいいけど」

そのまま、隣に立つ。

距離が近いのに、不思議と安心する。

「なんでここにいるの?」

私が聞くと、

「来ると思った」

「え?」

「昼に話してただろ」

(え、聞いてたの?)

宏太は少しだけ笑う。

「こういう場所、苦手だろ」

「……まあね」

思わず苦笑する。

「でもさ、一人でもなんとかなるし」

強がってみると、

「そうかもな」

一度肯定してから、

「でも、俺がいた方が安心だろ」

そう続けた。

(それは……そうなんだけど)

何も言えなくなる。