第5話「継承の朝」
朝は、いつもと同じように来た。
カーテンの隙間から光が差して、台所からは味噌汁の匂いがする。何も変わっていないはずの風景なのに、昨日までとは少し違って見えた。
父はいつも通り、エプロンをつけて立っていた。
そしてその隣に、あの女性もいた。
もう驚きはなかった。
ただ、胸の奥に小さな重さだけが残っている。
「おはよう」
女性が僕に言った。
その声は昨日より少しだけ近く感じた。
僕はすぐに返事ができなかった。
でも、何も言わずに無視することもできなかった。
小さく「おはよう」と返す。
それだけで、空気が少し動いた気がした。
食卓に三人で座る。
味噌汁の味はいつもと同じなのに、どこか違う。父は何かを言いかけて、やめるようにしていた。
母の写真は、リビングの棚にある。
そこだけは、ずっと変わっていない。
食事のあと、女性が食器を片付ける。
父はそれを止めなかった。ただ、少しだけ見ていた。
僕はその様子を黙って見ていた。
もう「何かが起きている」とは思わない。起きたあとに、自分がどういるのかだけが問題だった。
夜、布団に入る前にリビングを通る。
父と女性は小さく話していた。母のいないこの家で、新しい時間が静かに続いている。
僕は立ち止まらず、自分の部屋に戻った。
扉を閉めたとき、何かが終わったわけではないと分かった。
ただ、形が変わっただけだった。
朝は、いつもと同じように来た。
カーテンの隙間から光が差して、台所からは味噌汁の匂いがする。何も変わっていないはずの風景なのに、昨日までとは少し違って見えた。
父はいつも通り、エプロンをつけて立っていた。
そしてその隣に、あの女性もいた。
もう驚きはなかった。
ただ、胸の奥に小さな重さだけが残っている。
「おはよう」
女性が僕に言った。
その声は昨日より少しだけ近く感じた。
僕はすぐに返事ができなかった。
でも、何も言わずに無視することもできなかった。
小さく「おはよう」と返す。
それだけで、空気が少し動いた気がした。
食卓に三人で座る。
味噌汁の味はいつもと同じなのに、どこか違う。父は何かを言いかけて、やめるようにしていた。
母の写真は、リビングの棚にある。
そこだけは、ずっと変わっていない。
食事のあと、女性が食器を片付ける。
父はそれを止めなかった。ただ、少しだけ見ていた。
僕はその様子を黙って見ていた。
もう「何かが起きている」とは思わない。起きたあとに、自分がどういるのかだけが問題だった。
夜、布団に入る前にリビングを通る。
父と女性は小さく話していた。母のいないこの家で、新しい時間が静かに続いている。
僕は立ち止まらず、自分の部屋に戻った。
扉を閉めたとき、何かが終わったわけではないと分かった。
ただ、形が変わっただけだった。
