第3話「継承の食卓」
その女性が家の食卓にいるのが、少しずつ当たり前になっていった。
最初は違和感しかなかったのに、人は慣れる。慣れてしまう自分の方が、むしろ怖かった。
夕食の準備は、以前より少しだけ賑やかになった。
父と女性が台所に立ち、僕はリビングで宿題をする。その距離は近いのに、線が引かれているみたいに感じる。
「これ、好きかなと思って」
女性が作った料理が並ぶようになった。
父は「おいしい」と言う。その声は前より柔らかい。僕も「普通においしい」と答える。それ以上の言葉は出てこない。
食卓の空気は変わったはずなのに、どこか遠い。
三人いるのに、二人と一人に分かれている感じがする。
母がいた頃の食卓を思い出そうとするけれど、はっきりしない。
笑っていた気がする。話していた気もする。でもその記憶は、写真みたいに少しずつ色が薄くなっていく。
ある日、父がふと女性の方を見て笑った。
その笑い方を見たとき、胸の奥が少しだけ痛くなった。
怒りじゃない。悲しさでもない。
ただ、何かが自分の知らないところで進んでいる感じだった。
食事が終わると、女性は食器を片付ける。
僕も手伝おうとしたが、「いいよ」と優しく止められた。その優しさが、余計に距離を感じさせた。
夜、布団の中で思う。
この家は壊れてはいない。むしろ、前より整っているかもしれない。
それなのに、僕の居場所だけが少しずつ分からなくなっていく。
その女性が家の食卓にいるのが、少しずつ当たり前になっていった。
最初は違和感しかなかったのに、人は慣れる。慣れてしまう自分の方が、むしろ怖かった。
夕食の準備は、以前より少しだけ賑やかになった。
父と女性が台所に立ち、僕はリビングで宿題をする。その距離は近いのに、線が引かれているみたいに感じる。
「これ、好きかなと思って」
女性が作った料理が並ぶようになった。
父は「おいしい」と言う。その声は前より柔らかい。僕も「普通においしい」と答える。それ以上の言葉は出てこない。
食卓の空気は変わったはずなのに、どこか遠い。
三人いるのに、二人と一人に分かれている感じがする。
母がいた頃の食卓を思い出そうとするけれど、はっきりしない。
笑っていた気がする。話していた気もする。でもその記憶は、写真みたいに少しずつ色が薄くなっていく。
ある日、父がふと女性の方を見て笑った。
その笑い方を見たとき、胸の奥が少しだけ痛くなった。
怒りじゃない。悲しさでもない。
ただ、何かが自分の知らないところで進んでいる感じだった。
食事が終わると、女性は食器を片付ける。
僕も手伝おうとしたが、「いいよ」と優しく止められた。その優しさが、余計に距離を感じさせた。
夜、布団の中で思う。
この家は壊れてはいない。むしろ、前より整っているかもしれない。
それなのに、僕の居場所だけが少しずつ分からなくなっていく。
