恋愛百景



第4話「消えない卒業」

卒業式。

「みんな、本当におめでとう」

佐倉七瀬の声が響く。

しかし優斗には、もう届いていなかった。

(終わるんだな)

放課後の廊下。

偶然か必然か、二人きりになる。

(今しかない)

分かっていても、足が動かない。

「……葉山くん」

呼ばれて振り返る。

時間が止まったようだった。

(言え)

しかし出てきたのは——

「……お世話になりました」

違う言葉だった。

「うん。頑張ってね」

それだけだった。

(また逃げた)