恋愛百景



第2話「消えない沈黙」

進路相談の放課後。

教室には夕方の光が差し込み、机の影が長く伸びていた。

「葉山くんは、どうしたいと思っているの?」

佐倉七瀬の声は、いつも通り優しかった。

その一言だけで、胸が締め付けられる。

(今なら言えるかもしれない)

そんな考えが一瞬だけよぎる。

しかしすぐに現実が押し戻す。

(無理だろう)
(先生だし)
(迷惑になる)

「……まだ迷っています」

結局、いつも通りの言葉だった。

佐倉七瀬は静かに頷き、資料を差し出した。

その何気ない仕草が、やけに優しく見えた。

(何やってるんだ、俺)

帰り道、後悔だけが残った。