「つまりお試し交際ということね。もう手ぐらい繋いだ?」
「君に報告する義務はない。」
今井看護師は大袈裟にため息をついた。
「どうやら相当彼女にお熱みたい。波川院長夫人の座はもう諦めたほうが良さそうね。」
「諦めるもなにも、初めから君にその可能性はゼロだ。」
「ふふ。冗談よ。」
今井看護師のテカテカした唇がアヒルのようになった。
「女性にまったく関心のなかった波川先生が、大事な女性がいるなんて台詞を言う日が来るなんて想像もしなかったわ。富士山が噴火するかも。海外へ避難した方がいいかしら。」
「ああ。いっそどこか遠くへ行ってくれ。」
「波川先生は鈍感力しかないから心配だわ。せいぜい振られないよう頑張って。免許が取れなかったら、私がいつでもお相手してあげる。」
今井看護師は指でハートを作り、部屋から去った。



