気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


今井看護師の唇は朝から天ぷらでも食べたのか妙に油っぽく、テカテカしている。

芳香剤のような匂いを放つ今井看護師から、俺は椅子を転がし距離を置いた。

「必要以上に近づかないでくれ。」

頻繁に接触してくるので、俺と今井看護師が付き合っているなんて噂も出回っているみたいだ。

迷惑も甚だしい。

「そんなつれないこと言わないでよ。院長、なんだか深刻な顔をしていたわ。」

深刻な顔?あの能天気な親父が?

「親父は何か言っていたか?」

「いいえ。私達の関係がばれたのかしら。」

「私達って誰と誰のことを言っている。」

「もちろん、私と波川先生のことに決まっているでしょ?」

「俺と君になんの関係が?」

「私が先生に告白したら、ああって答えたじゃない。」

「まったく憶えていない。」

「波川先生っていつもそうよね。のれんに腕押しというか、はっきりしないというか。」