ふたりで川沿いを一緒に走った。
広大さんが私のペースに合わせて走ってくれるので、そんなに息も切れない。
朝の空気が清々しい。
こんなに爽快な気持ちになったのは久しぶりだ。
桜の花びらが、私と広大さんが走る空間にひらひらと舞い落ちる。
まるで、そこだけこの世界でふたりきりみたいだ。
「疲れただろ。少しベンチで休もう。」
私と広大さんは、小さな休憩スペースのベンチに座って、青く広い空を見上げた。
「誰かと一緒に走るのが、こんなに楽しいとは知らなかった。都といると新しい発見だらけだ。ささいなことでも世界が違って見える。」
広大さんがそうつぶやく。
「いや、違うな。誰かと走るからじゃない。都と走るから楽しいんだ。」
広大さんが、そう言い直す。
「それなら良かったです。」
すごく嬉しいのに、そんな凡庸な返ししか出来ない自分がもどかしい。
「しかし随分本格的に揃えたな。運動は苦手なんだろ?」
私の服装を見て、広大さんが感心したように言った。
「広大さんの体調管理のために同棲したのに、私の方が日々健康になっていきます。」
「運動に目覚めたのか?」
私は深呼吸をしてから、心をこめて告げた。
「いえ。春の桜を、広大さんと一緒に走りながら見たかったんです。」



