「都。」
俺は鍋の中身をお玉でかき回している都に、声を掛けた。
「広大さん。起きましたか?いま丁度カレーが煮えたところです。一緒に食べましょう。」
「ああ、ありがとう。」
都が作ってくれた、バナナとパイナップルが入っている甘口カレーは無限大に美味しくて、五臓六腑に染み渡った。
「こんな美味いカレーを食べたのは初めてだ。今まで食べてきたカレーは、きっとカレーではなかったんだと思う。」
「多分、それもカレーだと思います。」
俺はテーブルの向かい側で、大盛りカレーを食べている都に再度謝った。
「本当にすまない。久しぶりに会えたのに、このザマだ。」
小さな身体で俺を支えながらこの部屋へ運ぶのは、難儀だったに違いない。
「いいんです。ただの睡眠不足で良かった。どれくらい寝ていなかったんですか?」
「実は一昼夜眠れていなかった。仕事が立て込んでしまって。」
「デートを断ってくれても良かったのに。無理は良くないです。」
「テレビの婚活ドキュメンタリーで、有名な結婚相談所の女所長が言っていた。仮交際中の女性を放置するのが一番良くないと。3日空いたらイエローカードで、10日空いたらサヨウナラだそうだ。」
「ああ、あのカリスマ所長ですね。たしかにそれは間違いではないけれど・・・」
「それでいったら、俺は都ともう半月も会っていなかった。俺は仮交際の相手として失格だろ?そんな自分が情けない。」
「だからって身体を壊したら、元も子もないでしょう。そんなに自分を責めなくてもいいのに。」
都はスプーンを置き、じっと考え込んだ。
そして両手を鳴らした。



