「波川先生。長時間のオペ、お疲れ様です。」
重たい目を開くと、脳神経科医の佐島が、俺の顔を覗き込んでいた。
「ああ。お疲れ。」
「術後の体調はどうですか?」
「難しい症例だったから多少の不安はあるが、若い患者だから回復も早いと思う。」
「患者のことじゃありませんよ。波川先生の身体のことです。確かに先生の活躍は喜ばしいことですが、必要以上に期待に応えようと無理をしているのではないかと、僕は心配なんです。」
「ありがとう。でも心配には及ばない。俺は自分の体調管理には十分に気を付けている。」
「その根拠無き自信が心配なんです。」
佐島が眼鏡の奥の一重まぶたを細め、要指導患者を診るような目で俺を見た。



