気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


「いらっしゃいませ」

秋田出身の小町店長が、相変わらずそつのない接客で出迎えてくれた。

まだ待ち合せ時間の30分前だ。

広大さんは波川総合病院で患者からの信頼も厚く、その忙しさは分刻みだと美奈三から聞いている。

さすがにまだ来ていないだろう。

と思ったら、一番奥のテーブルで広大さんが、小さなパソコンのキーを高速で打ち込んでいた。

「お待たせしました。」

私が声を掛けると、広大さんは顔を上げ、すぐさまパソコンをブリーフケースに仕舞った。

「いや、そんなに待っていない。」

広大さんは澄ました顔で言った。

気を使ってくれているようだ。

婚活に前向きな姿勢は好印象だ。

出会ったときより、大きな成長が窺える。

私は席に着き、小町店長に「いつものお願いします。」と注文した。