気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


「あら。都ちゃん。今日はいつもと雰囲気違うじゃない?まるで婚活女性のお手本みたいなファッションね。もしかして、デート?」

仕事が終わり、帰り支度をしている私に、芳美先輩が声を掛けた。

「はい。仮交際の初デートなので、気合いが入っています。」

「仮交際?あなた、どこかの結婚相談所の会員になったの?それってNG事項じゃなかったっけ?」

「いえ。仮交際という設定でデートするんです。」

「え?そういうプレイ?」

「すみません。急ぐので、お先に失礼します。」

芳美先輩に指摘された通り、今日は清楚系ファッションにした。

婚活男性が最も好きな、ふんわりと春風のような花柄のワンピースは今日のために選んだ新品だ。

いつもはパンツルックを好んで着ているけれど、こういう服もたまには悪くない。

仮交際初デートは、第一印象が大事。

ここで気に入ってもらえなければ、次はない。

そして遅刻は厳禁。

婚活は受け身じゃだめ。

能動的に相手と向き合わなければ。

私は待ち合せ場所の「cafeあきたこまち」の扉を開けた。