気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


「スキンシップは無しではなかったのか?」

「婚約者の距離感ってこれくらいかな、と思いまして。」

都はそう言って俺から身体を離し、小さく手を振り、帰っていった。

いまのは反則だろ。

このどうしようもなくくすぐったい、初めて味わうこの感情はなんだ。

都がいなくなったこの部屋が、いつもより広く感じる。

これまでこの部屋にひとりでいることを、淋しいと感じたことなどなかったのに。

俺は自らの胸部に残る都のぬくもりに手を当て、その余韻に浸っていた。