気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


検査の結果、波川広大の脳に異常は見られず、頭部打撃による一過性の部分的な記憶障害だと判断された。

入院の必要はなく、すぐにでも帰宅してもいいとのことだった。

佐島医師が、私に頭を下げた。

「保土ケ谷さん。波川先生のこと、くれぐれもよろしくお願いします。波川先生は私の尊敬する先輩医師であり、この病院にはなくてはならない唯一無二の心臓外科医ですから。」

「はい。」

どうしよう。

完全に本当のことを話すタイミングを失ってしまった。

でも、波川広大がこんなことになった原因は私だし、その責任を負う義務があるのも私しかいない。

波川広大の記憶が戻るアシストを、私が引き受けるしかない。

私は気持ちを切り替え、帰り支度をしている波川広大に言った。

「広大さん。私になにか出来ることありますか?私、あなたの記憶が戻るお手伝いをします。」

「ありがとう。心強いよ。」

波川広大はそう言って、にっこりと笑った。