「佐島。ここはどこだ。」
佐島と呼ばれた医師が、波川広大に問いかけた。
「波川先生・・・あなたは自分が勤める病院で、階段から転げ落ちて頭を打ったんです。今日が何月何日かわかりますか?」
「3月8日」
「名前は?」
「波川広大」
「せんせー!婚約者の都ちゃんだよ?ほら、都ちゃんももっとそばに寄って!」
美奈三が私の背中を押した。
私は波川広大の頭頂部を見ながら言った。
「無事で良かったです。」
嘘がばれて美奈三に軽蔑されようが、経歴に傷がつこうが、そんなことはもう構わない。
生きていてくれて本当に良かった。
目覚めたばかりでぼんやりとしている波川広大が、私の顔をじっと見つめている。
そうだ。一刻も早く謝って、誤解を解こう。



