家に帰ると都がヒソヒソ誰かと話している声が聞こえた。
どうやらスマホで通話しているようだ。
「タケオ君。いつもありがとうございます。」
タケオ・・・男の名前だ。
いつも・・・都には俺以外にも親密にしている男がいるってことか?
「タケオ君。あなたは私の宝です。少しでも長くそばにいてください。」
ますます穏やかではない。
俺の心に地球が割れてしまうほどの大きな隕石が落ちて来たような衝撃が走る。
タケオって誰だ?
俺の都にいつの間に接近したんだ?
許せない。
タケオなんかに、俺の都は絶対に渡さない。
俺はそう天に誓い、都の声がするキッチンへと向かった。
仁王立ちする俺を見て、都は何事もなかったように微笑んだ。
「広大さん。おかえりなさい。」
「・・・・・・。」
俺は心を静め、極めて穏やかに言った。
「都。俺に隠し事があるな?」
「ありません。」
「とぼけても無駄だ。いまタケオという男と通話していただろ。」
「ああ。タケオ君ですか。」
都は振り向き、炊飯器を指さした。
「この炊飯器、タケオ君っていうんです。広大さんの胃袋に、美味しくて栄養のあるお米を炊いてくれるので、重宝しているんです。」
俺は炎舞炊き圧力IHタイプの黒い炊飯器を撫でた。
「いつも美味い飯をありがとう。でもおまえの寿命はせいぜい6年だ。俺の勝ちだな。」



