「都。新婚旅行に行かないか?」
俺の言葉に、都はたくわんを切る手を止め、俺を見て目を輝かせた。
「行きたいです。」
「仕事は休めそうか?」
「うちの会社は結婚関連の休みを奨励してます。カウンセラーの結婚生活は応援せよ、という社訓があるんです。」
「ホワイト企業だな。世界中の会社の手本にしたい社訓だ。」
「オーナーが大恋愛で結ばれたとかで。」
「どこか行きたい場所はあるか?ニューヨークでも南極でも連れていく。」
「南極は寒いから嫌です。国内でもいいですか?」
「もちろん。どこでもいい。」
都が行きたいなら、浅草の花やしきだってかまわない。
「私、熱海へ行きたいです。」
「熱海か。いいな。」
さすが都。チョイスが渋い。
「父方のひいお祖母ちゃんが、新婚旅行で熱海に行ったときの話を聞いたことがあるんです。そのときの思い出を語るひいお祖母ちゃんの嬉しそうな笑顔が忘れられなくて。」
「よほど楽しかったんだろうな。ご冥福を祈ろう。」
「ひいお祖母ちゃん、まだ生きてます。」



