男性とは、欲望を抑えきれない生き物だという。
広大さんは早々に、私をその猛々しい欲望の渦へ巻き込むのだろうと思っていた。
たしかに仮交際中に身体の関係を禁止したのは私の方だ。
それを広大さんは、ちゃんと守ってくれたのだ。
けれど仮交際から真剣交際に移っても、広大さんは私に手を出さない。
ただ指を絡めて、私の手を握りしめるだけ。
そしてあっという間に眠ってしまう。
最初は、心臓外科医という激務をこなしているのだから、きっと身体も心もくたくたなのだろう、そう思った。
広大さんが非番で、ゆっくり休息を取った日の夜。
私は今夜こそ、と強ばる身体を深呼吸でほぐし、広大さんの右側へ横たわった。
広大さんが私の方へ身体を向けた。
私は目を瞑り、広大さんの手が私の身体に触れるのを待った。
そしてとうとう、広大さんの手が私の髪を撫でた。
目を開けると、私を優しくみつめる広大さんの顔が目の前にあった。
「広大さん・・・」
「都の髪・・・ポメラニアンみたいで・・・可愛い・・・おやすみ・・・」
広大さんはそうつぶやきながら、私の髪をくしゃくしゃとかき回し、その日もいつもと同じように速攻眠ってしまった。
(広大さんのバカ!鈍感!おたんこなす!)
私は心でそう叫んだ。
そして広大さんに背を向け、枕を抱えてもんもんとした気持ちを抑えながら眠った。



