車のフロントガラスの向こうに見えるイチョウの木を見ながら、広大さんは私の話を黙って聞いてくれた。
「自分勝手な私の我が儘で、式を挙げず、本当にごめんなさい。」
広大さんは私の身体を引き寄せ、きつく抱きしめた。
「辛かったな。」
「・・・・・・。」
「でもそれは都のせいじゃない。都は心をこめてその縁を繋いだ。そこから先は夫婦の問題だ。責任を感じることなんてない。」
「・・・・・・。」
「俺と別れたくないから結婚式を挙げたくないなんて・・・可愛すぎるだろ。式を挙げることよりも、都のその気持ちの方が俺は何万倍も嬉しい。」
「広大さん・・・」
「都、俺の目を見て。」
そっと広大さんの目をみつめる。
広大さんはゆっくりと顔を近づけ、私の唇を優しく奪った。
その温かな唇が、私にかかった呪いを解く。
これが私達夫婦の誓いのキス。
どうしてだろう。
この人のそばにいると、心がすっと楽になる。
昨日見た赤ちゃんのかかとが可愛かったこと、明日食べたいバウムクーヘンのこと、もやもやした気持ちも、びっくりしたことも、涙がこぼれそうなことも、なんでも話したくなる。
広大さんはまるで歩くマイナスイオンみたいだ。
私はそれを深く吸い込み、体中を広大さんで満たされながら、これから共に生きていく。



