気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


ふと、俺は小山内さんの話を思い出した。

「都。こんなことはまだ考えたくないが・・・」

「なんですか?」

「もし君がこの世を俺より先に去って、俺があとから三途の川に行ったら、決して追い返さないで欲しい。お願いだ。」

俺は小山内さんほど強くない。

「大丈夫です。もし私が先に逝ったら、幽霊になって広大さんに取り憑きます。広大さんが先に逝ったら、私に取り憑いてください。約束です。」

「わかった。俺は幽霊の存在を信じることにする。でなきゃ、君に取り憑けない。」

「2人で入るお墓をいまから探しておきましょう。」

「騒がしくないところがいいな。墓石は最高級の庵治石(あじいし)を香川から取り寄せよう。」

「1年に一回、必ず健康診断を受けましょう。」

「ああ。俺は医者だ。どんな手を使っても都を長生きさせてみせる。」

俺が医者になる運命だったのは、親が医者だったからではない。

都と共に長い人生を生きるためだったのだ。

隣に座る都の存在を感じながら、俺は医者になって本当に良かったと思った。