「突然来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」
「虫の知らせです。」
「仕事は終わったのか?」
「はい。今日はビラ配りが終わったら、解散でした。」
あの会社、カウンセラーにビラまで配らせるのか。
「おみやげです。皆さんで召し上がって下さい。」
都は巣鴨で購入したという大福のパックを、俺に手渡した。
「ありがとう。医局の皆に配ろう。きっと喜ぶ。」
「私の怪談話は嫌がるのに、あの綺麗な看護師さんの怪談話は喜んで聞くんですね。」
「聞きたくて聞いたわけじゃない。それに、あれは仕事の一環だ。」
そう必死に訴える俺に、都は「わかっています。」と妖精のような笑みを浮かべた。
「巣鴨の洗い観音を、広大さんの健康を祈りながら拭いていたんです。そのとき、胸がざわついたんです。そして気がついたら、ここに来ていました。」
「あの看護師とは、なんでもない。もし疑うのなら、君の生き霊を飛ばして俺を見張ってくれてもかまわない。」
「生き霊になるのは嫌です。」
「今日は早番だから、一緒に帰ろう。カフェで特大パフェでも食べて待っていてくれないか?」
「わかりました。仕事が終わったらメッセージください。」
都の背中を見送り、俺は安堵のため息をもらした。
怒っている都も可愛いな。
しかし、虫の知らせ、か。
もしかしたら、本当に超常現象はあるのかもしれない。
俺は、自分の持論を考え直さずにはいられなかった。



