気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


「色んな患者さんが聞いてるらしいわ。女子トイレの個室から、か細い女性のうめき声を。」

「トイレットペーパーが無いと、訴えているんじゃないのか?」

「何かを数えているの。一枚・・・二枚・・・と。」

「お札を数えているんじゃないのか?入院費用が足りるかどうか心配なんだろ。」

「ほら。先生の後ろにも!」

俺はそんな脅しに屈せず、ゆっくりと振り向いた。

「わ!!」

そこには、気配を消した都が、無表情で立っていた。

「お邪魔でしたか?」

この声と表情は、絶対に怒っている。

トイレの花子さんよりも、番町皿屋敷のお菊さんよりも、静かに怒りを秘めた都の方が、よっぽど怖い。

「ふふ。いい気味ね。」

今井看護師はそう言い残し、去って行った。