「波川先生。この話、知ってる?」
ナースステーションのパソコンで電子カルテを見ている俺に、今井看護師が声を掛けた。
「仕事以外で俺に声を掛けるな。君のせいで、俺の大切な婚約者を危うく退職させるところだったんだぞ。」
「世間話くらいいいじゃない。それに波川総合病院の次期院長として、院内の空気を把握しておくのも仕事のうちでしょ?」
そう言われてしまうと、話を聞かざるを得ない。
「なにか変わったことでもあったのか?」
「実は、出るらしいのよ。」
「出る?何がだ?水虫の新薬か?」
「病院で出るって言ったら、幽霊しかないでしょ?」
またそれ系の話か。
やっと都の超常現象熱が治まったというのに。
夏でもないのに、いまは季節関係なく怪談が流行っているらしい。



