「なんで怒らないんですか?あなたは危うく、結婚という人生の一大事を、私のような腹黒女に乗っ取られるところだったのに。」
「そんなの、初めから知っていた。」
「知っていた?」
一体どういうことだろう。
「俺は記憶喪失になどなっていない。都と婚活パーティで出会い、謎のツーショット写真を撮られたことも、その後すぐ都に振られたことも、全部憶えている。」
「え?」
「記憶喪失を偽り、嘘をついたのは俺の方だ。俺の人生初めてにして最大の独占欲が暴走し、君の人生を奪おうとしてしまった。すまない。」
広大さんはそう言って、頭を床に擦りつけた。
「広大さん。頭を上げてください。」
私は広大さんのそばで立て膝をつき、その頭を抱きかかえた。
「でも元はといえば、私があなたを婚約者だと嘘をついたのだから、私が悪の大王の手先です。」
「いや、俺が記憶喪失という大嘘をついたのだから、俺の方が魔界の一族に連なる者だ。」
私と広大さんは、熱く見つめ合った。



